こんにちは。絵と文のイラストレーター、「さくらみ(さくらみゆき)」です。
こちらでは、イラスト制作風景や、日常の中のやさしい時間、
心躍るひとときを、イラストでお伝えしていきます。
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シャガールのおっぱい
上野駅


夕闇に光る上野駅で、私は雲に包まれたように
ふわふわと幸福ぴかぴかでした。。。



私は、絵を描いている人を見るのが好き。

それが外ではなく、室内で描いている姿だったら
もっと好き。

きっとその人は、風景ではなく、
歌い、泣き、笑い、恋する人の絵を描いているのだろうから…




じつは上野駅を歩いていた、そのつい2時間ほど前、
立ち寄った美術展の軽食コーナーの壁に、
ふと「一枚のポスター」を見つけたのです。

写真家『イジス』の撮った『シャガール展』

 「これ、どうしても今見たい!!」


帰りかけた道を引き返し、
「上野の森美術館」をさがしました。

シャガール展
ありました!
駅のとっても近くです。



入ってすぐ、出会ったのは、
こちらをまっすぐに見つめている
シャガール78歳のときの写真。

シャガール1


うん、やっぱり、目元、顔の輪郭、
シャガールの絵に出てくる人
そのものだなあ…って思う。

この、私の写真スケッチでは
あまり笑ってみえませんが、
他の写真を見ると、
あふれんばかりに人間的魅力がにじみ出ているような、
ステキなおじいちゃんなんですよ。




そして、最初に目にした絵。

じいっと見つめて、溶けました。



夕闇せまる青い部屋の、美しい陶器の花瓶には、
白い小さな花がたくさん生けられています。

カゴいっぱいに盛られたオレンジから
ただよう、甘くさわやかな香り…


その部屋の片隅で
結婚式から帰ってきたばかりのふたりは
灯りもつけずに
夕闇の中で、そっとキスを交わすのです。





「白い花束」
シャガール38歳のときの作品です。


「ああ、シャガールの絵、いいなあ…」


さきほどまで見てきた、
教科書のお手本になるような、
「いわゆる上手な絵」とはまったく違って、


気持ちがふわっと溶けるような、
やさしくてあたたかい物語が、
ぷわんと絵から広がってくる。


私の心もゆうらりと、宙を飛び始めました。





油彩に、水彩、銅版画、リトグラフ、木版画…

手法は違っても、恋人たちの声が聞こえてきそうな
浮遊感のある絵は変わらない。


特に魅了されたのは
おっぱい。


シャガールの描くおっぱいは、
うっとりするくらい
まん丸で、豊潤で、ステキ。


シャガールのおっぱい





シャガールは、その人生の中で、
三度結婚した人です。


22歳のとき、
のちに妻となるベラと出会い、
「自分の妻になるのは、彼女だと感じた」


 そのベラと、28歳で結婚。
 翌年、娘が生まれます。


 37歳、シャガールはパリに
 腰を落ち着けるようになり、
 この頃から画家として成功し始めます。


 しかし、ユダヤ人であった彼ら夫婦は、
 ナチスの迫害などもうけ、アメリカに2度亡命。


 その間も、夫婦の結びつきは強く、
 夫婦そろってさかんに郊外に散策に
 出かけたそうです。


ところが57歳のとき、ベラが急死。


35年もの長い時を共にした妻の死に、
「目の前が真っ暗になった」という彼は、
9ヶ月もの間、筆をとることができませんでした。



しかし翌年、娘の紹介で、若い妻ヴァージニア
と結婚。息子を一人もうけます。


 10年後、ヴァージニアとの仲が冷め…



その頃、またもや娘の紹介で
ヴァヴァという女性と出会いました。


そして、このヴァヴァと、シャガールは、
68歳から
98歳(1985年)で天寿を全うするまでの30年間を
連れ添うことになったのでした。



シャガール6




人の御縁って不思議ですね。

でも、この3人の妻たちは、
みんな、シャガールにとって創作の泉、
「魅惑のおっぱい」そのものであり、
大切なミューズ(美の女神)達だったのです。


彼女たちは、
結婚している間に、シャガールの絵の中に何度も登場し、
永遠の命を持ったのでした。





この展覧会では、シャガールの絵と共に、
イジスという写真家の撮った、制作中の
シャガールの姿がたくさん見られたのですが、


本当にステキなんです。






シャガール3





77歳のバースデー。
お祝いに訪れた二人の孫娘が、
いたずらな瞳を輝かせて見守るすぐそばで、
当たり前のように、絵を描くシャガール。
シャガール5





79歳。
しわくちゃになったシャガールおじいちゃん
の手から生み出される、
美しい恋人たちの素描。

カシカシ、コシコシとコンテが紙にこすれる音が
聞こえてきそうでした…
シャガール4






77歳。パリの「オペラ座の天井画」を制作。

大作の絵を描きながら、絵の中の人々の踊りの
輪の中の一部と化すシャガール。
シャガール7





そして、ある写真の前で、
私はぴたりと動けなくなりました。






それは、
パリの「オペラ座の天井画」が完成し、
そこに「Marc Chagall」とサインを書き入れ、
いすに座ったまま
自分の完成作を見上げているシャガールと…

その頭を愛しそうに抱えてキスをする、
妻ヴァヴァの写真でした。




シャガール




 ああ、これ…

 人間の幸せの究極の姿だよね…


なんだか、涙がぽろぽろ出ちゃったよ…







帰り道、
ふわふわしながら、たくさんの人が行き交う
上野駅を歩きました。



若くて美男だったシャガールが、
愛しい愛しい、シャガールおじいちゃんになるまでには、
たくさんの波が、その人生にあったんだろうと思う。


その波のすべてを飲み込んで、
まっすぐにキャンバスに向かって、
「見ている人を幸せにする絵」を描いたこと。


そして、その人が、とても愛されていたこと。



その姿に出会えた感動は、一生、忘れない。


シャガール8


ありがとう。シャガール。
やさしい時間をありがとう。








世界中の人に愛されているシャガール。


この展覧会は、私の見た日の3日後には
終わってしまったのですが、
またきっと、そう遠くないうちに、
新しいシャガール展が企画されることでしょう(^0^)ノ

皆様も、そのときをどうぞお楽しみに〜ラブ




 
JUGEMテーマ:アート・デザイン
素敵♪

さくらさんにこそ、ありがとう。
優しい時間をありがとにゃん♪
くらりん | 2007/12/16 13:51
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