上野にミイラを見に行ったのは、
若かりし頃のデートでのこと
だったかしら。
それから幾星霜、わたしは一人で
上野を訪れ、用事をすませた午後1時、
何か美術展でも見ていこうと思って、
上野公園をプラプラ歩いていた。
土曜日だけあって家族連れも多い。
みんな動物園に行くのかなと
思っていたら、どうも半数は
途中で角を曲がっていく。
何とはなしにその波に紛れこんで
歩いていたら、
左手に大きなシロナガスクジラ、
右手に機関車デゴイチをしたがえた、
古風な博物館があらわれた。
なんだろう?
この、ちょっと凄みのある感じ!?
頭にピンとアンテナが立ち、
あっと言う間にワクワクして、
磁石に引きつけられるように
中へと吸い込まれた。
それにしても…昔見た、
あのミイラの小さくて
古ぼけた感じの博物館が、
いつの間にこんな巨大かつ、
大量の展示物の博物館へと
化けていたんだろう。
広い…とにかく広い!
美術展を、人の3倍は
早いペースで見終わる私だけど、
ここはその「早見のワザ」を
持ってしても、
太刀打ちできないほど広大だ。
暗闇の向こうにあやしく光るは、
子どもたちの大好きなダイナソー!
アンモナイトの化石類はもちろん、
巨大な海洋生物の骨格見本、
圧巻のはくせい群、
科学の実験コーナー…
そして、どの階にも
元気のいい子どもたちが
魚のように泳いでいる。
すごいなぁ、日本の博物館!
いつの間にここまで進化していたの?
やがて日本館2階北翼
「日本人と自然」
というコーナーまで来て、
私はやっと足をとめた。
そこでは、
原始から江戸時代に至るまで、
6つに仕切られたガラスの中に
子ども一人、女一人、男一人の
三体のろう人形が、まさに
ホームドラマを演じている
最中だった。
最初の三つは、
湊川人、縄文人、弥生人で、
一家の主が今日の獲物を引っさげ、
家族のもとに帰宅する風景だ。
その手に握られた物は、
隣のブースに行くにしたがい、
鳥、鮭、農耕具へと
変わって行くのだが…
家族の評判を気にして
一家の主が何とも言えない
微妙な表情を
しているのが可笑しい。
「ああ人間だなあ」と思わず
くつくつ笑ってしまった。
そして…
そのコーナーの一番奥に、
その女性はいた。
まだ発見されて間もない、
江戸時代の女性のミイラだ。
そっと目を閉じた表情は、
見れば見るほどリアル。
髪型は時代劇でよく見る
「結髪」そのままで、
今までに見たどのミイラより、
ついこの間まで
生きていた!という感じ。
ホントの所、私はミイラの
肌の乾燥している感じはかなり苦手。
だってその乾いた肌の
かけらが風に混じって、
匂いと一緒に飛んできそうじゃない?
それでも、
恐竜の骨や動物の剥製より、
やっぱり断然、「人」のほうに
惹かれるんだなぁ…
恐いのは身近に感じているからだ。
私はその女性の「生」を想った。
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以上、最後までお読みいただき、
ありがとうございました!
ミイラのスケッチ、
載せられなくてほんと残念です。
でも、博物館の意向も、
あの彼女を見るとわかる気が
するのです。
それくらい、リアルというか、
実物のすごさがあるというか…
皆様にも
ぜひぜひ、実物とのご対面を
おすすめします!
(A4版2枚にまとめてみました)
ニューヨークの美術館や博物館と
日本のそれを比べると、
残念ながら日本に軍配が上がることは
少ないのですが、
ここ「国立科学博物館」は、断然
ニューヨークより良かったです!!
とにかく子どもたちが
嬉しそう。
その秘密は、たぶん、
「実験コーナー」が多いこと♪
子どもたちは、もう
ボタン押しまくり、
ハンドル回しまくり、
実験しまくりって感じ!
私は実験の階は、
素通りしちゃいましたが、
楽しそうなので
デートにもおすすめですヨ!
お互い、新しい発見がありそう♪
→他日、企画展に行ったときのルポを
写真とマンガでまとめてみました。
→国立科学博物館のホームページは